027: Interior

SOIL SETODA

海を通じて日本の各地とつながってきた瀬戸田港のそばに、
町の「内」と「外」をつなぐ新たなハブ『SOIL SETODA』が誕生。

広島県尾道市と愛媛県今治市をつなぐ「しまなみ海道」は、澄んだ海と青い空が美しいサイクリストの聖地。その中心地に位置するのが、生口島の瀬戸田町だ。年間の降水量が少なく温暖で、日本一のレモン生産地としても知られている。

瀬戸田にある「しおまち商店街」を活性化するためのプロジェクトの一環で、2021年4月に『SOIL SETODA(ソイル 瀬戸田)』がオープンした。“地域の魅力を体験できる街のリビングルーム”というコンセプトで、宿泊、飲食、観光案内所、ラウンジスペースを備えた複合施設として誕生。築140年の蔵をリノベーションした『SOIL SETODA KURA』と、新築の『SOIL SETODA LIVING』の2つの建物で構成されている。

デザインを手掛けたのは、若手デザインチームの『STUDIO DIG.』。このプロジェクトは、瀬戸田でローカルに根ざした街づくりを行いながら、地域経済の活性化を目指す地域商社『しおまち企画』と共同で行われた。

『KURA』1階には、レモンの収穫体験や料理教室、釣り、マリンアクティビティなど、地域住民が得意なことをツアーとして提案するアクティビティセンターのほか、土壌の再生と気候変動問題を考えたスペシャルティコーヒーロースター『Overview Coffee』も日本初出店した。瀬戸田では焙煎に加え、さまざまな形でコーヒーを体験できるテイスティングやワークショップも開催していく予定だ。

アクティビティセンターの一角にあるのは、瀬戸田の美しい風景写真が飾られた休憩スペース。ゆったり座れる作り付けのソファーをやさしく包むのが、Ultrasuede®だ。壁面の濃い木材の色に馴染むよう、落ち着いたブラウンをセレクト。心地よい肌触りが、旅の疲れを癒してくれる。

一方『LIVING』の1階には、地元農家や漁師から直接仕入れた旬の食が楽しめる薪火料理レストラン『Minatoya』と、その隣に地域住民や旅行者の憩いの場となるラウンジをオープン。電源やフリーWi-Fiも完備しており、ワークスペースとしても利用可能だ。この場所のソファーにも、Ultrasuede®が採用されている。こちらは目にやさしい落ち着いた若草色で、同じくUltrasuede®を使用したオリジナルのクッションは、ソファーの色に調和する淡いベージュ。喧騒から離れて、ここで少しでも穏やかな時間を過ごしてほしい、という想いが込められている。

『LIVING』2階はゲストルームフロアとして、デスクやクローゼットを備えたプライベートルーム4室と、最大4名が宿泊できるバンクベッドルームを用意した。いずれの部屋にも瀬戸田の爽やかな潮風が入り、光がさんさんと降り注ぐ。プライベートな時間をよりリラックスして過ごしていただけるようにと、各部屋の壁面もUltrasuede®で仕上げた。窓から差し込む光を柔らかく受け入れ、瀬戸田の景色と調和した上品な空間となっている。

プライベートルームには、デザイン的なアクセントとして、コーヒーカップなどの収納棚内部にもブラウンのUltrasuede®をあしらった。瀬戸内海の凪を眺めながらのワーケーションニーズは高く、ショートステイだけでなく中長期滞在を希望する来訪者もこれから増加する見込みだ。

内と外をつないできた瀬戸田港の歴史をアップデートした『SOIL SETODA』。この場所が地域のコミュニティハブとして、公共と民間の枠組みを超えた新しい地域創生の礎になるだろう。

SOIL SETODA
https://soilis.co/locations/setoda/


Creator

しおまち企画

しおまち企画は、ローカルに根差した街づくりを行いながら瀬戸田地域全体の経済を活性化させる新たな「地域商社」として、2019年に設立されました。地域活性化にあたって、地域の方々との対話を重ねながら、いわゆる観光ツーリズムの一時のブームとして消費されるのではなく、その土地の日常が魅力で溢れ、今後将来にわたって「住みたいまち」であり続けること、そして旅行者がその日常に触れ、体感し、魅力に共感することで「住みたいまち」となることを目指しています。

https://shiomachi.jp/

STUDIO DIG. 米山 宏介

–現代のニーズに合った空間、その空間を表現する上質な素材に重きを置く。クライアントのアイデンティティーを表現するため、一般的にあまり使われることのないオリジナルな素材を掘り起こし具現化している。大事にしているのは「掘る」= DIGというアナログな作業。直接物事に触れた時のリアルな感覚が、インスピレーションに変わっていく。

http://studio-dig.com/

Material