037: Interior

SHIBATAYA SAKE TEN &
HARUMI BEER BREWERY

晴海フラッグに誕生した、街の老舗酒屋の新たな挑戦

約18haという広大な敷地を有する、東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地。そこに東京都と11社の民間企業が、4,145戸の分譲住宅と商業施設を複合開発して誕生させたのが、晴海フラッグだ。

そこに「街の酒屋さん」として2024年3月1日にオープンしたのが、1935年に中野区に創業した老舗酒屋である『柴田屋酒店』。これまでに培った仕入れ力を活かして、日本ならびに世界各国から取り寄せたクラフトビール、入手困難な銘柄の地酒、ワイナリーから直輸入したワインなど、バラエティに富んだ品揃えを実現している。さらに、店内には『晴海ビール醸造所』も併設されており、晴海で作られたオリジナルビールも楽しむことが可能だ。

エントランスを入ると左に柴田屋酒店、右には晴海ビール醸造所の飲食スペース。グレイトーンの落ち着いた色で統一された店内の壁には、ビンテージのリキュールのポスターが飾られており、それがいいアクセントになっている。

正面のスペースはガラス張りで醸造所が見える構造となっており、「TANK TO TABLE」というコンセプトを体現するかのように、スタッフがビールを仕込む姿を見ることもできる。クラフトビール文化がもつ職人的な面と、臨場感あふれる仕掛けを空間の随所に見つけることができるのもこの酒屋の特徴だ。

醸造所前に置かれているテーブルは、東京・調布で家具製作を行う『TIMBER CREW』の工房で、作業台として使用されていたものを晴海の店舗仕様にリメイク。シルバーの三連の照明が設置されたことで、インダストリアルな空気がプラスされた。

また入って左手の酒店には、店舗空間を囲うように、天井近くまで高く設計された棚に世界中から厳選された多種多様なワインが並べられている。この棚に使用されたのが、Ultrasuede®️だ。クラシックからナチュールまで、幅広いワイン文化を許容する懐の深さを、スエードが品良く表現している。

そして入って右手の晴海ビール醸造所のカウンターの背後には、関東近郊の提携クラフトビール店のタップが並ぶ。フードメニューも充実しており、ランチ時にはクラフトビールを楽しむ人々で賑わいを見せている。

さらに奥の大きな壁面に描かれているのは、店舗で提供するクラフトビールの作り手たち。イラストレーターの竹内俊太郎氏がその姿を描くことで、改めて「TANK TO TABLE」というコンセプトを体感できる仕組みだ。壁面の下に設置された、Ultrasuede®️のオリジナルソファーも、空間を引き締めるアイテムとして一役買っている。自然光の美しさを素材が引き立てられるのは、路面店ならではだ。
今、我々が求める新しい酒文化の発信基地として、晴海フラッグの酒屋さんの挑戦を応援していきたい。


Creator

YKD 山田健一郎

飲食店、物販店、住宅リノベーションなど。 近年では大型マンションの企画デザイン、商業施設、ホテルのリニューアルなどの コンセンプト開発、デザイン監修設計、PM業務などを手掛ける。
代表的なプロジェクトとしてみどり荘、
HOTEL The Knot tokyo shinjuku、COMMUNE表参道など。

Material