023: Interior

Takigahara Farm

R-projectによって新しく蘇った空間。
築100年の古民家が、歴史を受け継ぎながら再生。
伝統に新たなデザインを吹き込み、心地いい場所へ。

鞍掛山を囲むように自然豊かな里山風景が広がる、石川県小松市の滝ヶ原町。限界集落だったこの地と出会った黒崎輝男氏が“Life with Farm”というコンセプトを掲げて誕生させたのが『Takigahara Farm』だ。

都市再生プロジェクト『R-project』により、持続可能なリノベーション文化を世に広めた本人が、新しいモデルケースとして選んだのが滝ヶ原。古民家を改装し、新たな農的文化の発信拠点を作る『北陸古民家再生機構』のプロジェクトとして、世界から注目を集めている。2019年度にはAirbnbのグローバルキャンペーンにも選ばれ、さらなる脚光を浴びた。

FARM内にある築100年の古民家は、ホステル『TAKIGAHARA CRAFT AND STAY』として生まれ変わった。現代を代表するデザイナー/建築家のモダン家具や現代アーティストの作品で満たされた空間は、デザイン愛好家にとってまさに楽園。敷地内のクラフト工房では地元の職人が木地を挽いて、新しい漆器ブランド「九」が立ち上がった。
古と新、伝統と現代の融合だ。

そして、滝ヶ原の文化的再生の象徴として改装されたのが、ホステルに併設された蔵である。ワインバーとしてリスタートしたこの蔵には世界中から厳選されたナチュラルワインが置かれ、1階はバーカウンター、2階は寛ぎながらレコードを聴けるオーディオルームになっている。

1階と2階を繋ぐ壁面には“文化的でサステナブルな素材”というテーマで厳選された、Ultrasuede®を採用。上質な時間と音を、柔らかいテクスチャーのスエードが優しく受け止める。ふと階段を見上げると、世界にひとつしかない無塗装のセルジュムーユのランプが部屋を美しく照らしている。この場所こそ、文化的なアプローチで持続可能な空間作りを成功させた稀有な例として、語り継がれていくことになるだろう。

滝ヶ原石の採石、九谷焼、炭焼き、紙すき。この地域には北陸の工芸文化と手仕事の生活文化が今もなお受け継がれている。文化を元に戻すのではなく、新しく再生する未来の拠点として、滝ヶ原はこれからも歴史を刻んでいく。


Creator

流石創造集団

流石創造集団株式会社
流石とは漢字で表した日本固有の概念。人々の意表をついて物事を進める事を旨とする。
山の石が水に流されていく様を見て、柔軟な水が、大きく硬い石を動かしていく様から出た言葉と解釈し、世の中全てに流石といわれる事だけを目指して活動する、創造的な集団を作るべく設立。

http://www.flowstone.jp/

Material